FAQ3 特別支援教育とICF~新学習指導要領から探ってみよう!~

「知りたいICF、教えてICF-CY」3

今回の内容は、「教育分野の『特別支援教育』においてICFがどのように考えられているのか、」皆さんにお伝えできればと思っています。

まず、「学習指導要領」について簡単に説明します。

教育にかかわる仕事をされている方や学生の皆さんは、すでにご存じの方も多いと思いますが、学校教育法施行規則において定められている教育課程や教科の内容とその取扱い、基本的指導事項などの基準を示した、幼稚園・小学校・中学校・高等学校そして特別支援学校の学習指導要領が文部科学大臣から告示されています。(※幼稚園は教育要領といいます。)

また、学習指導要領と合わせて示されるものとして、学習指導要領についての解説書があります。

今回改訂となった特別支援学校 教育要領 学習指導要領の解説書である「特別支援学校学習指導要領解説 総則等編」「特別支援学校学習指導要領解説 自立活動編」において「ICF」という文言が明記されています。

ここに至る経緯としては、学校現場でのICF活用の取り組みを踏まえた中央審議機会での議論を踏まえ、2008年1月の答申の中で特別支援学校の学習指導要領等にICFの考え方を取り入れる必要性が指摘されたことが挙げられます。 

それでは、具合的な内容について説明します。 

1 総則等編…個別の教育支援計画との関係について

 今回の改訂では、個別の教育支援計画の作成が義務づけられましたが、その個別の教育支援計画を作成する際に、関係者間での実態把握や共通理解のためにICFの考え方を参考にすることが述べられています。

 個別の教育支援計画を作成するにあたって、校内外の関係者間での連携ツールや実態把握のツールとして、「ICFの構成要素間の相互作用の図」を模した「ICF関連図」を用いた取り組みを既に行っている学校もあります。

多面的・総合的な見方ができるICFの枠組みを活用して子どもを理解した上で、効果的な支援方法や内容をとらえ、本人を中心として家族を含めた関係者全員が連携しながら個々の役割を果たしていくためのツールとしてICFの活用が期待されているのだと考えられます。

2 自立活動編…障害の捉え方について

学習指導要領総則の自立活動に関する記述は、2007年の学校教育法の改正を受けてその目標の一部である「障害に基づく種々の困難」が「障害による学習上又は生活上の困難」と改められたことを踏まえ、ICFを踏まえた障害の捉え方の必要性が指摘されています。

したがって、自立活動編において述べられているとはいえ、自立活動に限定したことではなく、特別支援教育全体でのことを述べていると考えられます。

ICFの構成要素である心身機能・身体構造・活動・参加といった生活機能を環境因子、個人因子も含めて障害の状態を相互に関連させながら、多面的、総合的に見つめ、その上で支援や指導のあり方を考えていく必要があることを示したものだと考えられます。

 これまでICIDHの概念図に見られるような、障害のある子どもたちに関連した事象を病気や機能の障害の結果として捉え、できないことをできるようにすることばかりに目がいく指導・支援を行ってきたことはなかったでしょうか。

一方、ICFでは、障害のある子どもたちの事象を子どもたちの中にある要因だけに限定して一方向で捉えるのではなく、個人因子、環境因子を含めた相互作用で広く捉えることを示しています。そのことを参考にしながら、特別支援教育では、子どもたちの様子を「参加」から捉え直す事例が多く報告されています。

解説書に掲載された事例について紹介します。 

下肢にまひがあり,移動が困難な児童が,地域のある場所に外出をできるようにする指導を例に考えてみます。

まず,実態把握においては,本人のまひの状態や移動の困難にだけに目を向けるのでなく,移動手段の活用,周囲の環境の把握,コミュニケーションの状況などについて,実際に行っている状況や可能性を詳細に把握します。

そして,このような生活機能と障害に加えて,本人の外出に対する意欲,習慣等や地域のバリアフリー環境,周囲の人の意識等を明らかにし,生活機能と障害に個人因子や環境因子がどのように関連しているのか検討していきます。 

ICFの考え方を踏まえるということは,「障害による学習上又は生活上の困難」を的確にとらえるとともに,子どもたちが現在行っていることや,指導をすればできること,環境を整えればできることなどに一層目を向けることを意味していると考えられます。

ICFの考え方をもとに子どもたちの姿を捉え直し、今まで気づかなかったことや新たな発見から、今までと違う見方で取り組む実践に期待したいものですね。 

ICFの構成要素間の相互作用の図