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日本特殊教育学会第51回大会 自主シンポジウムの報告

2013年10月17日 木曜日

2013年8月30日から9月1日に、明星大学で、日本特殊教育学会第51回大会が開催され、ICF-CY Japan Networkのメンバーが関わった自主シンポジウムが行われました。

・テーマ「ICFと合理的配慮と特別支援教育」
・ 企画者:齊藤博之(山形県立上山高等養護学校)、逵 直美(三重大学教育学部附属特別支援学校)
・ 司会者:徳永亜希雄(国立特別支援教育総合研究所)
・ 話題提供者:西村修一(栃木県立岡本特別支援学校おおるり分教室)、齊藤博之(山形県立上山高等養護学校)、逵 直美(三重大学教育学部附属特別支援学校)
・ 指定討論者:佐藤久夫(日本社会事業大学),春名由一郎(高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)

自主シンポジウムの企画者 齊藤氏より 
 「合理的配慮。これは今後、重要なものになる!」 ある意味、直感に近い考えから、このシンポジウムを企画しました。これまで、私は、ICF及びICF-CYを活用しながら実践を重ねてきました。ICFの活用により、多くの事柄が解決されてきたことを実感しています。合理的配慮を考える上でも、これまでのICF活用の実践が、その可能性を広げることと確信しています。
 合理的配慮が、これまで取り組んできたこととどう違うのか、また、合理的配慮というものが何を生み出すのか。今回のシンポジウムでは、そのきっかけを議論できたものと思います。話題提供の西村先生、指定討論の佐藤先生、春名先生、そして、貴重なご意見を提供していただいたフロアの皆様、感謝申し上げます。

自主シンポジウムの企画者 逵氏より
 昨年末、ICF-CY Japan Networkのメンバーが集まったときに、次の特殊教育学会の自主シンポジウムは、「ICFと合理的配慮」をテーマにして、話し合おうということになりました。しかし、いざ準備するために関連した資料を読み出すと「特別支援教育における合理的配慮って何だろう」と悩み考えてしまいました。
 今回のシンポジウムは、私たちが、ICFを活用した実践をとおして得た子どもたちの将来への可能性と同様に、基礎的環境整備と合理的配慮を、特別支援教育にどのように活かしていくのか考えるための、はじめの一歩であったと思います。
 フロアには、特別支援学校以外の支援者や、ICT教育を推進されている先生方の姿もあり、今後の更なるICFの理解啓発が、合理的配慮を推進していく上での一助になる予感がしました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
                                                                                         
自主シンポジウムの内容について、簡単に報告をさせていただきます。

 始めに,司会者の徳永氏からは、本シンポジウムに関連した情報及び趣旨説明として、障害者の権利条約における、合理的配慮の定義の確認と、平成24年7月の中教審分科会報告書の中で、合理的配慮及び基礎的環境整備についての具体的な観点の例示の紹介がありました。また、ICF-CYの分類項目と「合理的配慮」、「基礎的環境整備」それぞれの関連性と実践への援用について検討が進んでいることが報告されました。

 西村氏からは、ICFと合理的配慮の関連性及びICFを参考とした合理的配慮のアセスメントについて、報告がありました。合理的配慮とICFの共通点や配慮点、合理的配慮を見出す上でICFを参考とする利点や課題を整理するとともに、実践的な視点から、どのほうにICFを参考として、障害を有する一人ひとりの子どもに対する合理的配慮の具体内容を見出していくのかについて、具体的な事例を元にした発表でした。

 齊藤氏からは、就労支援と合理的配慮について、報告がありました。合理的配慮により、障害のある生徒の就労支援がどう変わるのか、また、どのような課題があるのかについて、高等部単独の特別支援学校の進路指導を通した実践が発表されました。

 逵氏からは、個別の教育支援計画と合理的配慮について、報告がありました。学校において新しい概念である合理的配慮は、子どもたちへの教育をどのように変えるのか、また、何が課題になるのかについて、特別支援学校の高等部の生徒の事例を元にした、発表でした。
 
 指定討論者の春名氏からは、隔離から統合へというテーマで、報告がありました。障害者雇用では、多くの障害のある人たちが、合理的配慮の提供がない状況で、能力を公正に評価されていない現状報告がありました。また、障害者雇用支援への合理的配慮の導入に際して、合理的な配慮や差別禁止だけは対応できない人たちに、どのように対処していくのかという課題が挙げられました。

 指定討論者の佐藤氏からは、特別支援教育における合理的配慮と基礎的環境整備の違いや個別の指導計画に合理的配慮の視点が加わった場合の変化、視力の障害があるお子さんに対する機能障害を補うことだけではない、合理的な配慮をした教育への参加について、質問が出され、各話題提供者も含めた討論がありました。

 今回のシンポジウムでは、特別支援教育の分野と就労支援の分野における、合理的配慮に関する現状と課題について、改めて考える機会となりました。今後も、障がいのある人達の立場に立った、合理的配慮がなされるように、具体的な事例をとおした検討を、続けていくことが確認されました。
文責 ICF-CY Japan Network 事務局 大久保直子